浦賀人が、吉井に棲む。

神奈川県横須賀市!ペリー来航の地より。

『ゴジラ対ヘドラ』~シリーズ中興の名作~

ゴジラゴジラ対ヘドラなど、ゴジラ作品に関するネタバレが含まれますので、読まれる方はご了承ください※

 

これこそゴジラの真骨頂

先日、両親が家に遊びに来た時に、ゴジラ対ヘドラのDVDを観た。わが一族は、習慣としてゴジラを観る事がある。

 

1971(昭和46)年に封切られたゴジラ対ヘドラ。当時の日本は高度経済成長の後期と言ってよく、現代日本の原型がほぼ出来上がった時代とも言える。高度経済成長は1954(昭和29)年の終わりごろから始まったとされ(初代ゴジラ公開年だ!)、1971年は、1973年から安定成長期と呼ばれる時代へと移行していく過程の時期だろう(1991(平成3)年バブル崩壊まで)。

 

学校で習うから皆知ってると思うけど、高度経済成長の時代は、日本の環境が破壊された時代ともいえる。有名なのが四大公害病で、例えば水俣病は、1956(昭和31)年に確認され、熊本の水俣湾に安全宣言が出されたのは1997(平成9)年だった。1970年には光化学スモッグによる大規模な被害が初めて確認され、ゴジラ対ヘドラの企画の発端となる。

 

世論も政治も公害についての認識、特に危機意識が高まっていた時代に公開されたのが、ゴジラ対ヘドラというわけである。 

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縦の目が不気味なヘドラ

 

「かえせ!太陽を」という、強烈なテーマソングと共に展開されるストーリーは、85分という短めな時間ながら、テンポの良さと重い主題が絶妙に絡み合って非常に濃密な内容となっている。

 

私がゴジラ対ヘドラを「ゴジラ中興の名作」と呼ぶのは、この作品で登場するヘドラが、実は「ヘドロのゴジラ」だからである。意味不明かもしれないが、考えても見ると、ゴジラとはすなわち、「水爆のゴジラ」なのである。ヘドラを語ることは、ゴジラを語ることと重なることが多く、ゴジラとは一体何者なのか、という、一番最初のゴジラからの問いかけを思い出すことができるからである。

 

近年のゴジラ(大好きだけど)で少し違和感を覚えるのが、「ゴジラとは一体何なのか」が、少し迷走気味な気がするからだ。ゴジラとは水爆大怪獣のことで、原水爆実験によって住みかを追われ、多量の放射線を浴び突然変異(巨大化とか熱戦を吐くとか)した恐竜(=怪獣)のことなのである。

 

ゴジラ映画でそこがブレたとき、5歳のころからゴジラ作品に触れてきた私としては、そのゴジラを水爆のゴジラとは認識できず、これだとゴジラとは別の怪獣じゃないか!と少年時代の私が心の奥底で叫び始めるのである。

 

話が横道にそれたが、ヘドラは宇宙からやってきた鉱物起源の生命体で、ヘドロなどの汚染物質と結合して成長した怪獣である。人間が作り出した汚染物質で突然変異したヘドラは、陸に上がるとコンビナートの煙突などから直接汚染物質を吸収するようになる。空を飛んだりすると、硫酸ミストをまき散らし、鉄はあっという間に腐食し、人間は溶けて骨となってしまう。

 

ゴジラは、そんなヘドラに戦いを挑むが、今まで見たことないくらいの苦戦を強いられる。右手は溶かされ、左目は潰され、ヘドロ攻撃にもがき苦しむ。その姿に、なんだか申し訳のない思いにかられながら、何とかヘドラを倒してくれと願いたい気持ちになる。

 

ゴジラヘドラの弱点を見抜き、自衛隊の兵器を利用して形勢を逆転、執拗に念入りにバラバラにして完全に破壊し勝利するわけだが、そこに喜びといったものはゴジラにも人間にもない。

 

汚れちまった海、汚れちまった空。ゴジラは人間を鋭く睨み、陸の上を帰ってゆく。ゴジラが潰れた目で睨んだ時、この時代の人々は、ハッとしただろうか。私はこのゴジラが睨むシーンが子供の頃からとても好きで、自分の生活の中で、ちょっとした悪いことをしてしまったとき、ハッと思い出したりする。そして、人間の味方に思えるゴジラも、実は原水爆実験が生んだ、悲しみの怪獣であったことを嫌でも思い出させられる。

 

初代ゴジラが、なぜあんなに怒って街を踏みつぶし焼き尽くしたのか。ヘドラを倒したゴジラが、なぜ人間を睨みつけたのか。この問いの答えは同じである。初ゴジの亡骸が海中深く没する時、なぜあんなに悲しいのか。海ではなく陸の上を帰ってゆくゴジラの姿が、なぜあんなに悲しいのか。これの答えも多分同じである。

 

ゴジラ原水爆実験が生み出した、悲しい怪獣である。最近のゴジラは、放射能を帯びているかもしれないが、悲しみを帯びていない。気がする。

 

ただ、ヘドラがやっつけられても、少しも同情しないんだけどね。

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ゴジラ対ヘドラ Blu-rayも欲しいな。映像や効果、音楽もかなり実験的。

 

ゴジラ好きな私、浦賀守。幼稚園の頃からのゴジラファンで、最初に発売されたDVDを全部買ったり、ファイナルボックスというDVDBOXも買ったり、かなりマニアだと思うんだけど、俳優さんとか監督さんとかについては全然詳しくなく、音楽性とか映像がどうとかもほとんどわかんない。

 

原水爆実験の落とし子という考えもひょっとしたら古いのかもしれないけれど、ゴジラの良いところは、油断すると反核反戦とか、反エネルギーといった、イデオロギーでおなか満杯な映画になっちゃう危険があるのに、そういう作品が無いということで、稀有なシリーズと言えるかもしれない。

 

ゴジラ作品にはバランス感覚が求められると思う。これからもゴジラには、時代を反映したテーマ性を追求してもらいたい。全部好きだけど(^^♪